1、はじめに

「とろねこ」といいます。

中部地方に住み、小さな動物病院を経営しています。

3年前の2013年2月(当時49歳)心房細動の治療、

カテーテルアブレーションを受けました。

この時の体験を何か残しておきたいとずっと思いながら

なかなか実行に移すことができないまま、時が過ぎていました。

術後3年をきっかけに、記憶が薄れてしまう前にと

重い腰を上げ、体験記を書いてみることにしました。

あくまでも体験記です。

専門的医学的なことは自分の知識の範囲内ですので

この病気について詳しく知りたい方は、

別の専門家の方の書かれたページを参考にしてください。

 

これが心房細動発作時の私の心電図です。

Hossaji  

下の正常な心電図と比べてみてください

6

Photo

明らかに違うということは、一目でわかると思いますが

その特徴は。

 

1、心房が収縮するときの波であるP波はなくなります。

2、心房が細かく震えているので、基線がふわふわ揺れます。

3、心室が収縮するときの波であるQRS波は、全くの不規則になります。

 

この心房細動、この不整脈自体で命を落とすようなことはまずありません。

問題は脳梗塞を引き起こすリスクが非常に高いということなのです。

 

余談ですが、私の父親は49歳で脳梗塞を起こし

その後何度も何度も脳梗塞を繰り返し60歳で亡くなりました。

そう言えば「心臓がどきどきする」と時々訴えていたことを思い出します。

今思えばきっと心房細動が関係していたのではなかったかと想像します。

35年以上前の事なので、心房細動と脳梗塞の因果関係が

医学的にもはっきりしていなくて、重要視されていなかったのではと考えます。

父親のこともあり脳梗塞になることだけは、絶対に避けたいと思うのでした。

それでは、次回から本編にはいります。


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2、もしや心房細動?いや間違いなく心房細動!

10年ほど前、ドクンという感覚の不整脈が起きるようになり

ホルター心電図の検査をしたことがありました。

その時は上室性期外収縮なので、心配はないし治療の必要はなし

との診断でした。

私の心電図(赤丸が上室性期外収縮)

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安全な不整脈ということで、このドクンは

あまり気にしない事にしていました。

 

しかし、ここ半年くらいは

このドクンの頻度がかなり高くなってきたこと。

いつもと違う何とも気持ちの悪い感覚の不整脈を感じること。

布団までべちょべちょになるような寝汗をかくことがちょくちょくあること。

夜中に心臓が止まるような感覚に突然襲われ飛び起きるときがあること。

何かがおかしいとは感じていました。

 

この日は、この「何とも気持ちの悪い感覚の不整脈」がなんどもなんども

繰り返し来ていたのです。

「はじめに」に書いたように動物病院を経営している私は

この不整脈の正体を明かそうと、

手術室の動物用心電図モニターを自分につけ、

監視していたのでした。

 

しばらくモニター画面をぼーっと眺めていると

あの「何とも気持ちの悪い感覚」と同時に

出た!!

Hossaji_2

 

もしや心房細動?

いや、どう見ても心房細動!

教科書通り!

 

「何とも気持ちの悪い感覚の不整脈」の正体がはっきりしたのでした。

そうなると脳梗塞のリスク

放置したら父親と同じ運命。

それはまずい。

 

病院へ行こうと決意したのでした。

2012年年末の出来事でした。


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3、近くの診療所へ

心房細動が見つかり、病院へ行こうと決心し

今後の治療のために元旦から禁煙し

(実は1日2箱吸うヘビースモーカーでした)

年明け早々、知り合いの医師が院長を務める

町の診療所へ行きました。

その医師には心房細動のことで

事前に相談にのってもらっていました。

 

胸部のレントゲン、血液検査、心電図検査、をし

ホルター心電計を取り付けてきました。

ホルター心電計は24時間心電図を記録するもので

本体は煙草の箱くらいの大きさで、胸に電極を張り付けます。

もちろん当日のお風呂はなし。

こんな感じです。

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そして、後日結果を聞きに診療所へ。

 

検査の日、起きている間には心房細動の自覚症状はなかったので

もしかして、今回は異常なしという結果もありえるかと思っていたのですが

寝ている間の深夜から明け方にかけて、

3時間以上心房細動の発作が持続していたことがわかりました。

 

地域の中核病院の循環器内科への紹介状を書いてもらい

詳しい検査をしてもらうことになりました。

この時アブレーションという治療法もあるということを

初めて知ったのでした。


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4、市民病院循環器内科へ

2013年1月下旬、紹介された市民病院循環器内科を受診しました。

 

先ずは検査。

血液検査、胸部レントゲン検査、心電図検査、運動負荷心電図検査、エコー検査、

そしてホルター心電図検査。

 

検査結果は1週間後。

 

3日くらいして、最初にかかった診療所の医師から電話がありました。

循環器内科の医師のところへ行って来たのだけれど

やはり深夜に長時間の心房細動が起きている。

アブレーションを受けた方が良いという結論になった。

次の診察の時、徳洲会病院を紹介されると思う。

という内容でした。

 

その時点ではカテーテルアブレーションについて

ほとんど知識はありません。

ネット上でいろいろ調べました。

原理、方法、実施している病院のことや症例数、

患者さんの体験記などなど。

一つ気になったのは、紹介される予定の病院での

症例数が当時はあまり多くなかったという点でした。

 

そして、市民病院循環器内科へ。

アブレーションを勧める理由は

年齢的に若く抗凝固剤を生きている限り飲み続けることへのリスク

発作時の自覚症状が強いため、日常生活や業務に支障をきたすこと

体力的に問題ないこと

などということで、

紹介先の病院については

希望される病院があればどの病院でも紹介できるが

連携がしっかりしていて、フットワークが軽いので比較的待たずに治療が受けられること。

例えば名大病院では半年ほど待たなければいけない可能性も。

技術的には、京都から多くのアブレーションを手掛けている有名な先生が来て、その先生が中心となって処置を行うので問題ない。

万一心臓をカテーテルが突き破ってしまうような重大な併発症が起きてしまった場合、

心臓外科医が常時いて、緊急の手術に対応できること。

などの理由から、徳洲会病院はどうでしょうか?という提案でした

納得して、徳洲会病院でアブレーションを受けることに決めました。

もう後へは引けません。

紹介状を書いてもらって、徳洲会病院へ行くことになりました。

 

 

この日から血液抗凝固剤の投薬が始まりました。

薬は新しい薬のイグザレルト。

抗凝固剤といえばまずワルファリンを思い浮かべますが、

ワルファリンはその効果に個人差があったり日差があったりするため

個人個人に合った投与量を決めるための検査が必要だったり、

(そのための入院が必要になる場合も)

量が決まってからも定期的な検査が必要だったり、

納豆などビタミンKを多く含む食品を食べられなかったり、

いろいろ煩わしい面があるのですが、

イグザレルトはその煩わしさがありません。

 

2013年1月下旬の出来事でした。


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5、はじめて徳洲会病院へ

事がどんどん進みます。

最初の診療所で心房細動の診断がついて

アブレーションを受けることになり、

そしてアブレーションを受ける徳洲会病院を受診

ここまで、わずか3週間です。

徳洲会病院までは、我が家から車で約1時間です。

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受付を済ませて、

先ずは、レントゲン、エコー、血液、心電図など

一般的な検査。

 

そして、診察室へ。

担当の医師Y先生と初対面です。

30代になったばかりの(あくまでも想像)若手の先生

(若っ!!ちょっと不安・・・・・こりゃ失礼)

 

「はじめまして、よろしくお願いします。

市民病院の先生からは詳しくお話しをうかがってます。

アブレーション治療を希望されてるんですね」

どんどん話が進む。

「後でCT撮りますから、まずこれ飲んでください。

あっ、ベータブロッカーね」

(私の職業を知っての対応だな)

 

そして、アブレーションについての説明

既に十分理解していることを前提にという感じで

重要ポイントに絞った内容。

(前もってネットで猛勉強しておいて良かった)

 

それから、今後のスケジュールについての説明

今日はこの後、心臓CT検査、

10日後に経食道心エコー検査、

そして、4週間後にはアブレーション本番。

 

市民病院でも話を聞いていた、

当日中心となって私の処置を行う先生

(ここからは京都の名医と呼びます)

とのスケジュールの段取りも既にできている様です。

3つの病院の素早い連携に感謝です。

 

 

そして、本日のメインイベント心臓CTを受けます。

 

アブレーションを行うにあたって、

左房の大きさや肺静脈の形状の特徴

その解剖学的な位置を知るための

重要な検査になるのではないでしょうか。

 

造影剤を投与するための静脈のルート確保をし

造影剤のアレルギーチェックをし、

点滴をしながら1時間ほど待ちます。

 

そして検査。

先ず説明がある。

「機械の指示に従って息を吸って下さい

思いっきり吸うのではなく普段通りです。

機械の指示があるまで息を止めてください。

造影剤が入るとオシリの辺がものすごく熱く感じますが

ビックリして飛び起きないでくださいね。」

機械が動いて検査が始まります。

(動いている心臓をCTで、、、)

(冠動脈も写るんだって、、、)

(スゲーなマルチスライスCT、、、、)

などと考えているうちに機械の指示

息を吸って呼吸を止めると、

造影剤が入ってきた。

 

うっ!!!お尻が熱い

聞いていなかったら、間違いなく飛び起きた(笑)

 

無事検査終了。

ホッとしていると、

「すみません、もう一度だけ撮らせて下さい」

ということで

(嫌です、とは言えないし・・・・・)

もう一度あのお尻の熱さを経験し

今度こそ検査終了

 

最後にY先生から次回の経食道心エコーの説明を受け

本日の予定終了。

 

終わったのは夕方。

結構疲れました。

 

次はアブレーションを受けるための術前検査の

最難関、経食道心エコーです。

6、術前検査 経食道心エコー検査

アブレーションを受けるにあたって

どうしても避けることができない検査。

術前最大の難所です。

 

脳梗塞の原因となる血の塊が

左心房内にできていないかを確認する検査である。

左心房は体表からのエコーでは確認しにくいため

食道にプローブ入れて食道から心臓を観察しようというものです。

1㎝近くあるプローブのついた管を、

喉から食道へ押し込むのだから、

そりゃ苦しいに決まってます。

 

ネット上にある体験談を見てみても

相当苦しいらしい・・・・・

 

事前の説明に使用された説明書です。

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ただ、「今回は静脈内鎮静をして行いますから

気付かないうちに終わりますし、記憶にも残りませんから大丈夫ですよ」

と言われていたので、とりあえず安心していました。

 

当日、検査の予約時間は午後3時なので

お昼ご飯は抜きになります。

なので、普段は食べない朝食を食べて出勤

関係ない情報ですが、我が家では調理担当は私ですし

普段朝食は抜きなので、結婚して初めて嫁さんに作ってもらった朝食?

ちょっと感謝。

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午後は臨時休診にして、病院へ。

受付をすませ、静脈のルート確保し

廊下で待ちます。

目の前を経食用のプローブを付けたエコーの機械が通過

(こいつだな、初めてみるけど結構太いぞ)

呼ばれて部屋に入り、いよいよ検査です。

 

中には検査技師さんが一人

ベッドの横には、エコーの機械。

ついているプローブにどうしても目がいきます。

(やはり太い)

先ずはキシロカインスプレーを喉にプシュー。

反射的に舌で喉を隠してしまい、

喉の奥にはかかっていないけど

(まっ、いいか・・・・)

しばらく喉にためて、指示があったら飲み込む。

ベッドに横になり、心電図モニターの電極をつけながら

技師さんと会話します。

「お酒は飲まれるんですか?もしかしてお強い方?」

「どちらかと言えば強い方かな?、あっ、だいぶ強いかもですね・・・」

「あー、そうなんですか・・・・・・・」

技師さん、とっても困った顔に。

それから、

「獣医さんなんですね~、あの、うちの犬がですねー、くしゃみを・・・」

しばし動物医療相談。

 

そうしている間に、喉の表面麻酔が効いてきます。

唾液がうまく飲み込めません。しゃべるとむせたり。

悪いタイミングで心房細動の発作も始まり、

嫌な感じ。

 

そこへY先生が入ってきます。

モニターを見て、

「あっ、いま出てますね、心房細動。」

「じゃ、始めますね」

左を下に横になって、マウスピースを噛みます。

「途中で意識が戻っても、ビックリして起きないでくださいね、

管が入っていても大丈夫ですから、息もできますから」

(はいはい、解ってます。)

「では、眠くなりますよ~!」

Y先生の持つ鎮静剤の入ったシリンジが空になるのを見とどけて、

すぐには効かないのかな?と思った瞬間

記憶が、糸が切れるように、

プツンと途切れました。

 

 

 

 

 

 

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気が付くとこの景色

ここどこ? そうだ、検査を受けたんだった。

検査中のこと、終わった時のことも、

全く記憶がありません。

終わってからどうやってここに来たの?

自分で歩いてきた?

そこさえ記憶にありません。

しばらくするとY先生がやってきました。

第一声が

「とろねこさん、大暴れするんだもん、

覚えてます?」

「一応左房見れましたけど、大変でしたよ。」

(えっ、そうなん? 

でも、そんな事言われても、ワシャ知らん・・・・

静かに寝ていたはずだぞ)

「そうだったんですか?全然覚えていませんけど」

 

この後、アブレーション当日のことについて

看護師さんから説明が。

尿カテーテルを入れること

手術時間は4時間くらい

終わってから最低4時間はベッドの上で安静に

仰向けのままで寝返り禁止

その間、小はカテが入っているので問題ないが、

万一大の時はベッドの上で

などなど。

 

立ち上がると、まだ千鳥足。

気分はとってもハイ!

 

精算を済ませて、

今日は運転禁止なので

嫁さんの運転で帰宅。

 

途中のファミレスで食事して

ビール1杯だけ飲んだっけ?

 

寝るまで鎮静剤の影響で?ずーとハイ。

とっても楽しい気分だった。

 

何がともあれ、

術前検査の最難関、経食道心エコー検査が無事終了。

静脈内鎮静剤のおかげで、

全く苦痛を感じませんでした。

先生には、ご迷惑おかけしたようですが・・・

 

2週間で、いよいよ本番。


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7、入院・アブレーション前日

心房細動のカテーテルアブレーションを受け

術後3年をきっかけに、記憶が薄れてしまう前にと

 

重い腰を上げ書き始めたこの体験記。

ついつい更新が止まってしまい、

あっという間に2年が経過してしまいました。

放置している間にも2万件以上のアクセスがあり関心の高さが感じられます

重い重い重い腰を再度上げ、続きを書くことにします。

 

恐怖の(?)経食道心エコー検査から2週間後いよいよ本番です。

手術前日の午後入院しました。

2泊3日の予定です。

万一重大な併発症が起きてもう食べられないことも・・・

との思いもあり

お昼ご飯は大好物のウナギ丼。

 

そして、職場に張り紙をして

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午後2時頃病院へ到着しました。

入院手続きを済ませ、病室へ

トイレ付きの個室を希望してたのですが

あいにく満室で、部屋はトイレなしの個室。

パジャマに着替えるとまるで病人の様です。

術前の検査や処置とかあるのかと思いきや

今日は何もないらしく、暇な時間が過ぎます。

 

18時に夕食が配られます。

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予想外に盛りの良いどんぶり飯がどーーーん!

80kgの体重に必要なカロリーはごはんで取れということですね。

夕食後もただ時間をつぶすだけ。

 

20時の面会終了時間に嫁さんが帰り

 

21時に消灯

いつもだったら仕事が終わりようやく夕食が始まる時間なのに

どうしよう~

テレビも消してくださいとのことなので

仕方なくベットに潜り込む

そこへ看護師さんが見回りに

「あら、とろねこさんもう寝たんですか?」と

(眠いわけではないけれど、何する事もすることがないのでしかたなくだよ・・)

しばらくはツイッターで友達と絡んだり

雑誌を読んだりベッドの中で時間を過ごす

 

うとうとしていた0時ころだったか看護師さんが入ってきました。

「すみません、心電図のモニター付けるのを忘れてました」

胸に電極を張りつけて

(ついに、本当の病人みたい (笑))

 

モニターを付けて間もなく、心房細動の発作が始まりました。

このところは一日に何度も起きている発作なので

さほど気にすることもなく

明日でこの心房細動からも解放される

(うまくいけば)

最後の発作をいとおしく楽しんでいたのです(笑)

と、看護師さんが急いでやってきました。

「とろねこさん、大丈夫ですか?具合悪くないですか?」

ナースセンターのモニターで心房細動発作に気付いたようです

「いつものことですから、慣れてます。大丈夫です。」

 

さすがに緊張もしているせいか

あまり眠れない夜でした。

 

いよいよ明日

 

 

8、カテーテルアブレーション当日術前

いよいよ当日。
 
6時くらいに看護師さんが検温に
 
今日の予定の説明がありました。
食べ物は朝食まで
水は9時まで
午前中から点滴開始
術前に尿カテーテル
13時ころよりアブレーション
術後4時間はベッド上で安静(寝返り禁止)
飲食は術後3時間で可
などなど。
(術中は意識がないので、一番の問題は終わってからの仰向けでの4時間だな)
(普段横向きで寝ているので、仰向けはかなりきつそう、腰が痛くなりそうだな)
(3時間後、飲食可能になった時のために、ベットの上でも飲めるものを買っておかなきゃ)
 
7時半に嫁さん到着
朝が苦手なはずなのに、とっても早起きしてくれたみたい
(感謝)
 
8時前に朝食
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相変わらずどんぶりに大量のごはん。
この量のご飯を食べるのには
おかずが足りません。
と言いながらも完食。
 
そして、ルート確保、点滴開始。
撓側皮静脈(人間もそう呼ぶのかな?)
に太い留置針(16G?18G?)をグサリ
これがけっこう痛い
 
アブレーションは13時ころから
持つ時間が長い長い
時間があるので、先日もらった説明書に目を通します。
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すごいことが出来るようになったもんだと医学の進歩に感心する。
医学は進歩しても防ぎきれない重大な併発症はどうしても起きてしまう。
それはごくごく僅かな確率であるのだけれど。
 
職業柄いつも思う。
たとえ0.01%の確率で起こる併発症であっても、
それが起きてしまうことはあるのであって
起きてしまった本人にとっては100%なんだと。
 
いろいろ考えていると、ちょっと怖くなる
しかし、もう逆戻りはできません。
 
12時頃、ついに尿道カテーテル留置の時がやってきた
仰向けに寝る
おちんちんの先を消毒される
カテーテルが目に入る
(なにこれ、太!こんなの入るんか?)
「口で大きく息を吐いてください」
いよいよ入ってくる。
(痛い)(痛い)
「ごめんね~!私にはついてない物だで、その痛さはわからんわ〜」
(笑う余裕はない)
カテの先端が前立腺を通過(たぶん)
(むちゃくちゃ痛い)
尿が戻ってきてようやく膀胱到達
バルーンを膨らませて終了。
 
ホッとしたところに、次なる試練が
痛みというより、不快感。
どう表現したらよいのだろう
おしっこが漏れそうな感覚。
というか、
おしっこをしようとして、今まさにおしっこが出ようとした瞬間に、おちんちんの先を摘ままれておしっこが出ない感覚。
解りますかね??
 
アブレーション開始まで1時間
点滴と尿バックが繋がってしまったため、
ベッドに横になって待つ。
尿道カテーテルの不快感と闘いながら
頭の中は手術への恐怖感より尿道カテーテルのことでいっぱいであった。
ただただそれだけ
 
「とろねこさん、では行きましょうか」
看護師さんが迎えに来た。
看護師さんと、嫁さんと3人で同じ階にある心臓カテーテル室へ向かう
入り口で嫁さんと別れ中へ。
心臓カテーテル用の処置台とたくさんの大きなモニター画面
数名のスタッフがあわただしく準備をしている
 
「台に乗ってください」
踏み台を使って上る、結構高い
「全部脱いでください」
完全なすっぽんぽん。
脱ぐと同時に背中や胸にいくつもの電極やセンサーが貼り付けられる
「それでは、仰向けに寝てください」
自分の左側にY先生がいることに気づく
酸素マスクをして
いよいよです。
 
この場になっても、頭の中は尿道カテーテルの不快感で一杯
(とりあえず麻酔がかかればこの不快感から逃れられる、早く麻酔を)
 
「では、麻酔入れますね」
 
とY先生。
 
経食道心エコーの時のように
一瞬で意識が消える。
 
 
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9、カテーテルアブレーション当日術後

静脈内に麻酔薬が入ると間もなく
プツンと意識が途切れました。




「もー朝だね~」
「今日はホント忙しかったね~」
 
看護師さんの会話が聞こえる
 
(ん?今は朝?確かアブレーションが始まったのは昼の1時頃だったよな)
(てことは、ものすごい時間が経過してる??)
(ここは自分の病室ではないな)
 
このころから、ようやく自分がいる場所や今の時間
時系列的なことが理解できるようになってきた。
 
この時間までのことは、いくつかの出来事の記憶が断片的に残っているだけで
それが何時ころなのか、
それがどの順番で起きた出来事なのか、
覚えていないのです。
 



嫁さんの話や、自分の記憶を頼りに術後のことを書いてみることにします。
 
 
アブーレーションが終わったことが嫁さんに知らされたのは19時過ぎ
 
約6時間が経過したことになる。
 
術後の状態が良くなく病室ではなくナースステーション隣接のHCUに入りました。
「終わったよ~」
と嫁さん。
目を開けて返事をしたらしい。
(なんとなく覚えている)
(終わったんだということは認識したと思う)
(えっ、もう終わったのという感覚もあったような)

 
それから21時の消灯時間までしばらくの間ベッドの横にいてくれたらしい。
声をかけると返事はする、会話もできるが、すぐに目を閉じてしまう、とのこと
(まったく記憶がない)
 
消灯時間が来て嫁さんが病室へ帰るとき
「えー帰っちゃうの~!」
と何度も何度も
子供のように言ったらしい。
(まったく記憶かない)
 
このときは自分が病室ではなくHCUにいることは理解できてないはず。
だから、今夜は病院に泊まってくれるはずだったのに
何で自宅に帰ってしまうのかと思ったのだろう



 
これ以降のことは自分の記憶に残っていることだけなので
それが何時ころの出来事だったかは全くわからない。
それがどの順番で起きたことなのかも定かではない。

 
眼を開けて頭を動かした瞬間天井が回る
激しいめまい。
たぶんそのまま枕もとに嘔吐した。
 
吐き気あり。
ナースコールを押したいが指に力が入らなくてボタンが押せない
必死に声を出して「すみませーん」と呼ぶ。
何とか間に合ってプラの膿盆に嘔吐。
「あら、真っ黒ですね」
「口ゆすぎますか?」
吸い飲みの水を口含だ瞬間思わず飲んでしまった。
2回目は成功
 
看護師さんは私がナースコールを押さないのは
ナースコールが探せないかと思ったらしく、
「とろねこさん、なにかあったらこのボタンを押して呼べばいいからね」
とナースコールを手に握らせてくれた。
(本当は指に力が入らなくて押せないのだ)
 
何度か嘔吐した かな?
 
先生と連絡が取れて許可が出たからと、制吐剤を注射してもらう。
嘔吐は止まる
 
定時的に膨らむ血圧のモニターのカフが膨らむのが気になる
 
他の人のモニターのアラームが気になる
 
徐々にここは病室ではないことが理解できて来た。
なにか人気を感じる。
隣のベッドのご老人が起き上がって私のベットのそばまで来ていた
ナース―コールで看護師に知らせる。
(ボタンが押せた!)






「もう朝だね~」
「今日はホント忙しかったね~」
看護師さんの声が聞こえる。
 
ということはとっくに仰向け安静時間の4時間は過ぎているはず
「横向いてもいいですか?」
 
「大丈夫ですよ」
(とっても楽)
 
「ベッド少し起こしましょうか?」
(さらに楽、周りの様子が見える)
 
そうしていると、嫁さんが入ってきた。
朝6時過ぎ頃だったかな?
毎日顔を合わせている人なのに
とっても嬉しかった。
とってもほっとした。
ものすごく愛おしく思えた。
(やや大げさかな)
 
スポーツドリンクを買ってきてもらって飲む
(むちゃくちゃ美味い)
 
そうしていると、Y先生が入ってきた。
「とろねこさん、具合はどうですか?
 術中に脳梗塞起こしちゃったかも知れませんね
 なんか途中で急におかしくなっちゃって」
(まさか)
 
とっさに自分の手足を動かしてみる
普通に動いた。
「手も足も普通に動きますけどね、ほら」
 
内股の傷にガッチリ巻いてある圧迫包帯を外してもらう。
そうしていると、朝食が運ばれてきた。
 
昨日の朝と同じどんぶり飯
(えっ、食べるの?)
(いきなりこの量かい)
さすがに食欲は全くない。
おかずだけ無理に食べて、ご飯を一口だけ食べようとする
どんぶりがとっても重い・・・・
持ち上がらない
(ずっと寝てたから、こんなもんか)
 
こうして、術後1日目はHCUから始まった。
 

10、カテーテルアブレーション術後1日目

HCUから病室へ帰れることになりました。
 
エコーと胸部レントゲンとMRIの検査をして
終わったらそのまま病室へ帰ります。
 
「とろねこさん、検査へ行きますけど立ち上がれますか?」
(もちろんですよ、立てないわけないやん)
ベッドに腰掛ける体勢から
どっこいしょ。
(あれ?どうしたんだろ)
足にも手にも力が入りません。
なんと自力では立ち上がることが出来ません。
 
結局、車いすで検査へ行くことに
看護師さんに介助してもらって、車いすに座る
(情けない・・・・・)
 
「では行きますので、足置きに足を乗せてください」
なかなか足が持ち上がらない
(どうしちゃったんだろう、自分の足じゃないみたい)
手で自分の足を持ち上げて
やっとこさ準備OK。
 
と、ベッドを片付けていた看護師さんの声
「おー、流血事件だ~」
今まで、タオルをかけてあったから気付いてなかったのですが
今まで寝ていた枕の横に結構たくさんの血液が
夜中に何があったのかははっきり解りませんが
たぶん嘔吐だと思います。
 
出血してるのは、アブレーションの時温度が上がりすぎないよう
食道に入れてあった(はず)の温度計で
食道に傷がついたのだと思います。


 
そして、検査へ。
先ずは心エコー。
たぶん、術後の心臓の収縮の状態や心嚢水の有無を検査。
すぐ終わりました。
それから、胸部レントゲン
そして心電図
 
最後は脳のMRI検査
10年ぶりくらいでしょうか
約30分騒音の中でひたすら動かずに


 
そして、待望の(?)病室へ帰ります。
常にみられているようで、(当たり前ですが)
プライバシーのあまりないHCUから
病室に帰れることはすごくうれかった。
 
付き添い許可が出たので、最初に入った部屋ではなく
付き添い用の簡易ベッドが置ける少し広めの個室に変わりました。
部屋に戻ってホッとして
 
ただすごく疲労感があり
お昼まではうとうとしながら過ごしました。


 
そしてお昼ごはん
完食。

 
幸い術後はあまり気になっていなかった尿道カテーテル
体調が良くなるとともに
気になり始めました。
気になりだしたら、とにかく気になる。
午後には抜きますと聞いていたので
待ち遠しい。
(早く来い、早く来い)


 
一時間ほどまち続けて
待望の看護師さんが現れる。
(じっとしてても痛みを感じているのに、抜いたらさぞかし痛いだろうな)
「口から大きく息を吐いてくださーい」
(うっ・・・痛い)
無事終了。
 
おむつからパンツに履き替え
(快適快適)
 

ここからは自力でトイレに行かなければならないので
ちょっと立ち上がってみる
(できるかな?少し不安)
自力でなんとか立ち上がる
 
歩いてみる
全く問題なし。
(今朝のは何だったんだろう)
(やっぱり脳梗塞なんてなかったんじゃないかな?)


 
夕方前にY先生に呼ばれました。
今朝撮ったMRIの画像を見ながら
「やはり、脳梗塞が起きていまね。」
左側頭葉に4×8mmの脳梗塞病変
素人が見てもはっきりわかります。
 
「このまま入院して少し様子を見させてください」
 
アブレーション自体は完璧にうまくいったようで
発熱と白血球が高いのとCRPが高いのは術後の影響で
明日以降も続くようであれば、敗血症の心配も出てくるので抗生剤を使います。
といった説明でした。
 
将来脳梗塞にならないためアブレーションを受けたのに
そのアブレーションで起こしてしまうとは
さすがにショックでした。
(症状はどんどん改善しているし、言われる通り様子を見るしかないのだろうな)
 
※色々調べて見ると心房細動のカテーテルアブレーション直後のMRI検査ではかなりの高率で脳梗塞病変が認められるらしい。ただ、症状を出すような脳梗塞は極めてまれとのこと。
 


そして、夕食。
 
写真あり。
今朝病室へ帰ってきたとき、友達へメールの返信しようと試みたのですが
何度やってもうまく入力できなくて、スマホに触ることをあきらめていたのです。
このころから普通に使えるようになりました
 
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熱があって体はだるかったのですが、完食。
今朝はとっても重く感じたご飯大盛りのドンブリも、難なく持てます。

 
夜看護師さんが検温に来た時気付く
尿道カテーテルを抜いてもう6時間
そう言えばトイレ行ってない
したいという感覚もあまりない。
 
看護師さんとトイレへ
 
尿量を測りたいのでとしびんを渡される
なかなか出ない・・・
「出ますか?」
看護師さんがのぞき込む
(そんなにのぞき込まれたら、出るものも出なくなるよ~!)
 
ちょっと時間がたって出た!
最初はさすがに尿道に痛みがあった。
だけど、大量。
(一安心)




 
そして消灯
付き添いの嫁さんのいびき。
昨夜はベッドのない病室で
床にバスタオルを1枚敷いてだけで
一夜を過ごしたそうだ
ごめんな。。。
 

11、カテーテルアブレーション術後2日目

術後2日目の朝が来ました。
 

朝の検温
 
熱が下がりました。
手足の麻痺もほとんどありません。
心臓も快調。
上室性期外収縮のドクンも
もちろん心房細動もありません。
心臓が普通に動くってことは、
なんと気持ちの良いことなんでしょう
何気なく、当たり前で、全く普通のことなのに
本当に幸せに感じます。
 
脳梗塞の関係の機能検査をするとのこと。
 


朝食はパン
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もちろん完食。
 
朝食が終わると嫁さんは
健康保険の「限度額適用認定証」を取得するためと
明日の仕事の段取りをするために自宅へ。
そうなんです。
 
予定では明日から仕事に復帰するはずたったので
明日来院予定(前にも書いてますが、ウチは動物病院を経営してます)
の人全部に電話をかけ調整をしなくてはならなくなったのです。
 



コンコン
「失礼しまーす」
最初に来たのは運動系の機能の検査の人
いろいろやったので詳しいことは忘れてしまいましたが
 
「眼を強く閉じてください」とか
 
「握手して強く握ってください」とか
 
「人差し指で私の鼻を指さしてください、自分の鼻を触ってください、それを何度か繰り返してください」とか
 
「歩いてください」とか
 
「立ち上がって、そのまま目を閉じてください」などなど。
 
全て問題なし(たぶん)


次は嚥下機能
 
聴診器を喉にあて、水をゴックン。
問題なし(たぶん)
 


ここでお昼ごはん
食べ物の写真ばっかですみません
20130227_030541000_ios



 
午後からは、認知機能検査。
(最近物忘れひどいから、大丈夫か??)
 
「お歳はおいくつですか?」
(ん?48だっけ9だっけ(笑))
 
「ここはどこですか?」
(これは、大丈夫)
 
「次の3つの言葉を言ってください、あとでまた聞きますので覚えてください」
「桜 猫 電車」
(やばっ!こういうのは苦手・・・)
 
「100から7を引くといくつですか?」
「93」
「そこから7を引くと?」「さらに7を引くと?」「さらに?」
(うううっ 間違えた(笑))
 
横で聞いていた嫁さんが笑っている。
 
「これからいう数字を逆に言ってください」
先ずは3桁
次に4桁
(わぉ、4桁は間違えそう・・・・)
 
「それでは先ほど覚えた3つの言葉を言ってください」
(ここで来るか!もう忘れたぞ・・・・)
「桜・・・   猫・・・・  ん?」
(あれ?何だったけ)
「乗り物です」
「ああ、電車」(汗)
(こりゃ減点だな)
といった感じ
 
こうして機能検査は終了。




夕方に先生の回診。
「とろねこさん、運動機能も、高次脳機能も問題ありませんね」
「ただ脳梗塞のこともありますし、しばらくは入院で経過観察しましょうね」
 
「とりあえず明日のところは嫁さんが仕事の段取りをしてきてくれたんですけど
それ以上はもう休めないです」
 
「そうですか・・・・・じゃあ、明日退院にしましょうかね
帰るために今日は院内を歩き回って筋力を付けてくださいね。」
 
やや強引でしたが
明日の退院が決まりました。



夕食もおいしく頂き
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明日はいよいよ退院です。
 
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12、カテーテルアブレーション術後3日目(退院)

退院の日の朝を迎えました。
 
今日も心臓君は快調
 
心房細動はもちろん
上室性期外収縮も全くありません。
 
何度も書きますが
心臓が普通に動いていることが
とっても気持ちよい。
そこで心臓が動いていることさえ、忘れてしまいそうです(笑)
 
手足の麻痺も全くありません。
 


朝一の検温で看護師さん
「あらー、とろねこさん人間になってる~!」
(おいおい、生まれたときから人間ですが)
 
「私、術後の夜HCUで担当させていただきました。」
(ああ、そうなんだ・・・・
ごめんね、顔さえ全く思えていないわ)
 
「そうだったんですね、お世話になりました」
(ところどころ、看護師さんとのやり取りの記憶が残っている)
(とっても好感がもてる対応だったことも)
 
「いやー本当に、こんなに回復されてよかったです。
奥さんも心配されましたもんね~」
(そんなに、悪かったんだ)
(記憶のないところで、なにか迷惑をかけてなかったのかな?)
 
そして、静脈の確保がとれ点滴終了。
心電図のモニターもはずれ
完全に自由の身
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最後の病院食です。
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精算を済ませ
 
リストバンドを切り
 
いよいよ退院。
これで自由の身
 




外の世界は気持ちよい。
 


自分で運転してみる
(大丈夫、問題なし)
 


途中でスーパーに寄り
今夜の食材をゲット
 
昨夜ツイッターで餃子の写真をみかけた影響で
餃子が食べたい。
餃子の材料と、
なんだかんだ買い物して家へ


 
夕方4時ころから祝杯!
(そう言えば、お酒飲んでいいのかな?)
(誰かのブログで、退院後しばらくは禁酒って書いてあったな)
(退院後注意で禁酒って言われなかったし)
(計画的にあえて聞かなかったものある)
 
では、
なにはともあれ無事退院おめでとう。
乾杯~!
(結局飲んでるし~)
今夜は豪華です


 
餃子も皮から作りました。
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